シングルマザーを含め、低所得の世帯にとって心強い存在である児童扶養手当。児童扶養手当が受給できたことで、生活がとても助かったという方は多いのではないでしょうか?ですが、児童扶養手当はいつまでも際限なく受給できるというものではありません。
子供の年齢が対象年齢を超えたり、給与所得が制限額を超えると受給が終了するのです。
もちろん、所得が上がったなら公的な助成金に頼らなくても暮らしていけるようになってきたということですから、基本的には喜ぶべきことです。
ですが、それまで受給していた金額がパタリと終わるわけですから、終了するその年は手元に入ってくる金額が下がるということになりかねません。
その時に慌ててしまわないよう、今回は児童扶養手当の受給終了をシミュレーションしてみます。
目次
児童扶養手当受給条件を確認
ではまず児童扶養手当の受給条件を軽く確認しておきます。
今回はすでに児童扶養手当を受給している人に向けて、受給が終わった時のことを考えるための記事ですので、ここは軽く確認するだけとさせていただきます。
低所得に世帯に向けて、子供の人数に応じて助成金を申請できる児童扶養手当。支給金額には2種類あり、「全額支給」と「一部支給」とに分かれます。それぞれの支給額は下の通り。
児童扶養手当支給額
扶養する児童の人数 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
1人目 | 4万2,500円 | 4万2,490円~1万30円 |
2人目 | 1人分+1万40円 | 1万30円~5,020円 |
3人目以降(1人につき) | 2人分+6,020円 | 6,010円~3,010円 |
全額支給の方なら、お子さんひとりの場合で月額4万2,500円の支給が受けられるわけですから助かりますよね。
この児童扶養手当を受給できるかどうかは、給与所得額が所得制限額よりも下回るかどうかで決まります。お子さんの人数別の所得制限額は下記の通り。
所得制限額
扶養する児童の人数 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
0人 | 49万円 | 192万円 |
1人 | 87万円 | 230万円 |
2人 | 125万円 | 268万円 |
3人以上 | 163万円 | 306万円 |
所得額とは、給与支給そのものの額から、税金などを含む経費を引いた金額のことです。所得制限額よりもご自身の所得が下回るかどうかは、下記のように計算します。
所得額=給与所得控除後の金額+年間の養育費(×0.8)-その他該当する控除
お給料に加えて、元配偶者から養育費を受け取っている場合はその総額の8割も加算対象となります。では、給与所得控除後の金額の求めからはというと、下記の通り。
給与所得控除後の金額=給与支給総額(年間)- 所得控除額
更に、「所得控除額はいくら?」という方に、下の表をどうぞ。
所得控除額
給与所得の額 | 所得控除額 |
---|---|
給与の金額が180万円以下 | 給与所得控除=収入額×40%(65万円未満の場合は65万円) |
給与の金額が180万円〜360万円 | 給与所得控除=収入額×30%+18万円 |
給与の金額が360万円〜660万円 | 給与所得控除=収入額×20%+54万円 |
ここまで計算方法をご説明しましたが、昨年の源泉徴収票をお持ちの方はそちらを見ていただくと給与所得控除後の金額がちゃんと載っていますから一発解決しますよ。
さて、では例として給与所得が年間250万円の人の場合を考えてみましょう。養育費は受け取っていなかったとして、お子さんは一人とします。この場合給与所得額は、
2,500,000円×30%+180,000円 = 930,000円
93万円が所得控除額です。では次に、所得額を求めます。
2,500,000円 - 930,000円 = 1,570,000円
所得額は157万円です。これを児童扶養手当の所得制限額の表に当てはめると、全額支給の制限額である87万円は超えますが、一部支給の制限額230万円を下回るので、一部支給が受けられるということになります。
児童扶養手当支給額を計算
では、一部支給の中で実際にいくら受給できるのかですが、下記のように計算します。
月の支給額=4万2,490-(年間所得-全部支給の所得制限限度額)×0.0226993
これを例に当てはめるとこうなります。
4万2490円-(1,570,000円 - 870,000円) × 0.0226993 = 26,600円
例の場合の月の支給額は26,600円ということになりました。月々の生活費に26,600円が上乗せできると思うと、児童扶養手当の存在はやはりとても大きいですよね。
児童扶養手当はどのように打ち切られるの?
では、その大きな存在である児童扶養手当が打ち切られるタイミングというのはどのようなときでしょうか?
児童扶養手当には、児童手当と同様に年に一度「現況届」の提出が求められます。
その年の家庭の状況を行政に提出するのです。児童扶養手当を一度でも更新した経験のある方なら、現況届におぼえがあるはずです。行政によって現況届の提出時期は異なることがあるかもしれませんが、8月の提出が多いようです。
現況届を提出すると、行政による審査ののちに児童扶養手当のお知らせが届きます。その時に「受給停止」と記載された場合、所得額が所得制限額を上回ったための受給停止となるのです。
児童扶養手当は一度その年の受給が決定すれば、その年の途中で打ち切られることは基本的にはありません。打ち切りになる可能性があるのは年に一度、現況届を提出した後ということになるわけです。
では、受給停止となる所得制限額の230万円に当たる給与額はいくらなのでしょうか?
それは、給与所得控除額により上下しますが、大体350万円から355万円の間。
月々の給与明細の給与総額を12か月分にして考えたときに、年に350万円以上の給与が発生しているようなら「次の現況届の提出で、私の児童扶養手当受給は打ち切りになるかもしれないな」と考えましょう。
受給が終了!受給最終年と受給打ち切り後の手取り額はどう変わる?
では、年間の給与総額が児童扶養手当の受給資格を失う直前の340万円くらいの場合を例にしてシミュレーションしてみます。年間の給与額が340万円の方でボーナスなどの支給がない方の月の給与額は約283,300円。
一見収入としては十分にも見えますが、お子さんが大きくなって習い事をしたいと言ったり、都内在住であった場合にはまだまだ暮らしが安定したとは言い切れない金額でもあります。
この方がその一年もとても頑張って仕事に励み、その年で月1万円ずつ程度の昇給を得たとしましょう。すると翌年の給与総額は352万円。
その年の中で残業をした日が何日かあったり、休日出勤をしていてその手当てが出ていたりするともしかして355万円を超えてしまうかもしれません。
340万円だった年収をもとに受給していた児童扶養手当の支給額は、上の計算方法をもとに算出するとその額は月額で12,300円。年額だと147,600円です。
この時注意が必要なのは、受給している期間の収入額。現況届の提出後、児童扶養手当の支給資格の判断に使われる収入額は、前年の収入です。
つまり、例の方の場合、352万円の収入を得る年に147,600円の支給を受けることになるわけです。ですので、その年に手元に入ってくる所得額は上の算出方法で計算した所得額で2,284,000円。
これに児童扶養手当の支給額である147,600円を加算して、2,431,600円ということになるんです。
この方が翌年、同様に現況届を提出し、352万円の給与総額で児童扶養手当の支給停止となったとします。その年も仕事を頑張って月毎1万円の昇給となっていた場合での給与総額は3,640,000円。その場合の年の所得額は2,372,000円ということになります。※実際は352万円の給与額では支給停止とならない可能性があります。
児童扶養手当を受給できた最後の年の所得額に受給額を加算した額が2,431,600円。受給停止した最初の年の所得額が2,372,000円。手元に受け取ることのできる金額は、59,600円のマイナスとなるわけです。
お住まいの地域によってはこんなものも児童扶養手当と一緒に打ち切りになる
児童扶養手当の受給停止と同時に打ち切られる助成がほかにもあります。
都内在住の方は、月額2,000円まで(支払い周期である2か月で4,000円まで)が免除となっていますが、これも児童扶養手当が支給停止となるタイミングで終了となります。
月の水道料金は家庭によって異なりますが、免除額と同じ月2,000円程度を使用する家庭の場合、年間で約24,000円の支払いが新たに発生します。
他にもあります。医療費の助成を受けている方も、児童扶養手当の支給停止と同時に医療費助成も終了となります。それまで全額免除であったのか、一部免除であったのかによって影響は異なりますが、医療費全額免除もしくは1割負担であったものが通常通りの3割負担に戻るわけです。
このように、児童扶養手当の支給停止の年は、手元に入ってくる金額が減るだけではなく、支払額が増加することもあり得るのです。現況届の提出時期でなくても、「次の現況届で児童扶養手当が支給停止になるかな?」という予測は立てておいたほうが事前に心の準備もできて慌てずに済みますよ。
児童扶養手当はいつかもらえなくなるものとして考えよう
児童扶養手は母子家庭にとって時に生命線にもなりえる、とっても大切な存在です。所得超過で支給停止になるということは、児童扶養手当に頼らなくても暮らしていける経済力を身に着けた証拠ですから喜ばしいことなんです。
喜ばしいことだからこそ、支給停止の年に手元に入ってくる金額が下がってしまうということをあらかじめちゃんと認識して、準備しておきたいもの。
今年一年の所得額がもしも児童扶養手当の所得制限額に近づいていると感じた場合には、支給停止を想定した貯金や節約を心がけて、突然の所得減に驚かないように準備を始めていきましょう。