離婚したい!自分でできる調停申し立て

2018年の統計によると、同年に離婚したカップルは20万7千組。結婚したカップルは59万組ですから、離婚するカップルの多さに驚かされます。よくテレビで見かけるような芸能人の「円満離婚」のような離婚は協議離婚と呼ばれます。当人ないし代理人同士の協議によって婚姻関係の解消に伴う取り決めが行われる離婚の方法で、この方法で離婚が成立するならばそれがベストなのでしょう。ところが、それがうまくいかない、交渉が平行線をたどってしまうということも間々ある話です。

そんな時、弁護士さんにすべてをお任せにして待っているだけの状態にできるなら話はとても簡単です。でも、金銭的な事情などにより弁護士に依頼をしていないという方もいらっしゃいますよね。協議離婚がうまく進まない場合に年単位で時間を置くという方法もありますが、「それは困る、早く離婚したいのに」という場合には調停を申し立てることになるかと思います。今回は弁護士に依頼をしていなくても、自分でできる調停申し立てを解説します。

調停って何?

まず、何よりも最初にそもそも調停とは??という方に、調停というのがどのような場であるのかをお伝えしておきます。

調停とは、 生活の中で生じる身近なトラブルや事業の立て直し,親族間の問題などを抱えてお困りの方のために,裁判所の調停機関が,間に入って話し合いにより,適正・妥当な解決を図る制度 (公益財団法人日本調停協会連合会ウェブサイトより引用)です。文中にある通り、調停は離婚のための制度ではありません。離婚時のもめ事の解決のためにも利用することのできる制度ということなんです。

調停は自分で申し立てることが可能です。裁判所に申し立てをすることになるのでなんとなく法律家に頼まないとできなさそうなイメージを持っている方もいるようですが、専門的な法律の知識がなくても調停はどなたでも申し立てることが可能なんです。

対して裁判はそうはいきません。「なんという法律の第何条何項に基づいて、具体的にどのような事柄に問題があるのか」を明らかにする必要がありますから、素人が一長一短でできる仕事ではないのです。もしも直ちに裁判を起こす必要を感じているならば今すぐ弁護士事務所に転がり込みましょう。転がり込むだけならお金はかかりません。とりあえず電話してみたらいいのです。

調停離婚を目指すならしておくべき事前準備

もしあなたが今すでに離婚を考えていて、協議離婚は難しいのではないかと考えているなら、今のうちから調停の準備をしておくことをお勧めします。

では具体的には準備とは何をしたらいいのか?

それは「離婚やむなし」とあなた方夫婦以外の第三者が思うような証拠を集めることです。あなたがあなたの配偶者と離婚したいと思う理由がお金の浪費ならば、浪費の照明になる証拠として歴代の預金通帳やあなたがつけた家計簿を配偶者に持ち出される心配のない場所に隠しましょう。あなたの配偶者がモラルハラスメント常習犯なら、暴言の数々を日記に書き記しましょう。ボイスレコーダーを仕込んで生活し、実際の音声を入手できればなお良しです。というように、離婚したい理由に応じて手に入れられるだけの証拠を集めていきましょう。メールやLINEなどが証拠になるという方なら、スクリーンショットを撮ってデータ保管かプリントアウトしておきましょう。スマホの中のデータは生ものです。いつどのような不慮の事故でダメにならないとも限りませんから万全を期した準備を心がけましょう。

調停の種類

先述の通り、調停は離婚のためだけの制度ではありません。近隣とのトラブルやビジネス上のトラブルなどでも申し立てることのできる制度です。

その中にあって、特に離婚調停のことは「家事調停」の中でも「 夫婦関係調整調停(離婚) 」です。カッコで離婚という表記があるのは、同じ夫婦関係調整調停には円満といって、離婚は目指しておらず、家庭内での争いを円満に解決するための調停もあるからです。

家事調停には、夫婦関係や男女関係に関する調停、親族関係に関する調停、子どもに関する調停、相続に関する調停などがあり、それぞれの中にもいくつかの種類が存在します。調停の種類からわかる通り、家事調停はすべて家の中での紛争を解決するための調停であるのに対して、家賃の滞納や給与の未払いなどの紛争を解決するための調停は民事調停といいます。一口に調停と言っても様々な種類があるのですね。

夫婦関係調整調停(離婚)を申し立てる方法

調停って色々あるのねってことが分かったところで、実際に調停を申し立てるにはどうしたらいいのかを確認していきましょう。

調停を申し立てるためには作成しなくてはならない書類があります。それが申立書。申立書は裁判所のウェブサイトからダウンロードすることもできますし、裁判所に出向いて用紙をもらうこともできます。管轄の裁判所によっては、同じ体裁に整えたデータを作成し、出力して提出することが可能なところもあります。

※管轄の裁判所を調べる

申立書は手書きでの作成で構いません。原本の提出に加えて、コピーを相手方(配偶者のことです)に送られることになりますから丁寧に作成しましょう。この時、相手方に知られたくない情報がある場合にはコピーの際にその部分を隠してコピーを取ることが許される項目もありますが、もしそれに該当する場合には作成してからコピーを取る前に直接裁判所に相談してみましょう。管轄の家庭裁判所に事前連絡の上平日の9時から5時の間に出向いて相談してみましょう。裁判所の職員の方は申立書を見慣れていますからケースバイケースでどのようにしたらいいのかを教えてくれますよ。

申立書には収入印紙を貼る欄があります。1200円分の収入印紙を用意しておくか、たいがい裁判所の近くには収入印紙を購入できる司法書士事務所があるものですのでそちらを訪ねてもいいでしょう。

更に、 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)を用意しておきます。用意しておくものは基本的にはこの3点。もう一度リマインドとして挙げておきます。

ですが、離婚はすべてケースバイケースです。平日の日中しか空いていない裁判所に何度も通わなくてはならないのは困ってしまいますよね。できるだけスムーズに申し立てまでを行うためにも、事前の相談に1回、申立書を含む書類の提出に1回の計2回、裁判所に出向いて申し立てを完了しましょう。

また、裁判所によっては連絡用の切手を申し立て時に提出するよう求められるところもあります。その意味でも事前相談に一度言っておけば間違いがありません。

すでに述べた通りですが、申し立ては基本的に直接裁判所に出向いて行います。郵送ではありませんので注意しましょう。

調停の流れ

申し立てを行うと、1か月程度の期間ののちに自宅に郵送物が届きます。この郵送物はあなたと相手方(配偶者)の双方に届きます。これ以降、あなたは申立人、配偶者は相手方と呼ばれることになります。郵送物で調停が行われることと、第一回の調停の日程が連絡されます。

調停が始まって以降は、調停が成立して調書が作成されるか審判が下りるかするまでの間、一か月半程度に一度の頻度で調停に通うことになります。2回目以降の調停日時は調停の場で直接決めることになりますのである程度希望を述べることができるようになります。1回目だけは何とか都合をつけて出席するようにしましょう。

第一回目の調停の際には、これまであなたが集めた証拠をまとめて持参するようにしましょう。その際、原本が手元にちゃんと残るように、コピーを提出用と相手方用用意しておきます。必要と感じるなら、自分用のコピーも用意しておきましょう。そしてその証拠について、理路整然と説明ができるようにしておきましょう。もしもそれが難しいと感じるならば、事前に主張をすべて文章にまとめておくようにします。もし、まとめておいた文章は相手方には渡したくないなどの要望がある場合にはその理由をしっかり調停員に説明しましょう。まっとうな理由であれば認めてもらえることが多いはずです。

調停は調停室という部屋で行われます。調停室にはあなたの調停を担当する調停員が男女1名ずついます。調停員はあなたの調停専属の調停員です。申立人と相手方はそれぞれに待合室があり、それぞれの待合室で待機します。定刻になったら申立人から先に調停室で調停員に調停を申し立てた理由、離婚したい理由を説明していくこととなります。

一般に調停は申立人に有利であるといわれています。ですが、調停員はあくまでも中立の存在。「どちらが悪いのか」を判断してくれるのではなく、「どの辺が妥協点ですかね?」ということを第三者の観点から一緒に考えてくれる人です。ですので、感情的にダラダラと話すのはできるだけ避けましょう。あくまでも調停員は一般人。印象が悪くならないように注意しましょう。

数回の調停の末、申立人と相手方とで折り合いのつく着地点が見つかったらそこで調停成立となり、裁判所に「調停調書」を作成してもらうことになります。どうにも折り合いがつかない場合は裁判官による「審判」へと移行します。審判の内容も調停調書に記載されます。この調停調書は裁判での判決と同等の法的拘束力を持ちますのでその後ずっと大切に取っておくようにしましょう。

このような流れで調停成立を目指すわけです。

調停を申し立てるなら気を付けるべきこと

申し立てた内容はすべてが申立人にとって都合のいい方向に進むとは限りません。調停はあくまでも調整をするためのところだからです。そこで意地になって譲歩せずにいて審判になった場合、必ずしもあなたにとってうれしい審判の内容になるとは限らないわけです。調停の場では極力私情を捨てて、「私はこれだけ譲歩しているんですよ」という姿勢を見せることも忘れないようにしましょう。これが意外と難しいところ。もしも慰謝料を請求したいというような場合、相手方は当然払いたがらないわけですから調停が長引いたり、審判になった場合でもあなたの望む結果にならないことが予想されます。慰謝料が絡むような場合にはぜひ弁護士さんへの依頼を検討しましょう。

まとめ

いかがでしたか?緊張しますが調停は実は低額で、しかも自分で申し立てることが可能です。「離婚したいけれども弁護士費用が賄えない」、「離婚さえできれば満足」などとにかく離婚したいという場合、自分で調停をしてみるという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか?

どなたかの参考になるとうれしいです。

おすすめの記事